File.06 [休み明けの馬の信頼性] 勝利の方程式

活用法

休み明けの馬の信頼性 その1

最近G1でも休み明けの馬をみかけるけど、信用していいのか?

■休み明け 消すべきか買うべきか?

なぎさ:そうそう、休み明けの馬の取捨っていつも悩むのよね。
けんすけ:休み明けの馬は信頼度が薄いから、G1馬以外はみんな切っちゃえばいいんじゃないの?
なぎさ:確かにそれで事足りる場面もあるけど、人気薄の休み明けの馬が来た時にはいやじゃない?
赤ペンおやじ:そう言うときは、人気薄の休み明けの馬だけを買えばいいぞいっ!
なぎさ:効率が悪いような気がする。
けんすけ:と言うより、悪い。無駄金使う前に、実際に休み明けの馬について調べてみよう。
なぎさ:じゃあ何からみていく?
けんすけ:その前に、検証する内容をまとめよう。

休み明けの定義
前走から90日以上間隔(3ヶ月)の開いた馬を指す

検証の目的と項目
  • 休み明けの馬の信頼度を明らかにし、馬券検討の際に割り引く必要があるのかを考える。
  • 休み明けが問題にならないクラスはあるのか?
  • 牝馬は牡馬よりも仕上がりやすいと言われているが本当か(性別による差はあるのか)?
  • 休み明けの馬体重は増えた方がいいのか? 減っているとまずいのか(通説検証)?
  • etc

なぎさ:色々あるね。まず、何から行く?
赤ペンおやじ:儲かる馬はどれだぞいっ!
けんすけ:まてまて、まずは休み明けの信頼度からみていこう。

表1.休み明けでない馬の成績(人気馬) グラフを見る
人気 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数
1人気 34.70% 54.10% 66.60% 77.50% 83.50% 6675
2人気 19.10% 37.80% 52.70% 78.90% 80.90% 6473
3人気 12.20% 27.10% 41.10% 75.60% 77.30% 6336

表2.休み明けの馬の成績(人気馬) グラフを見る
人気 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数
1人気 36.00% 49.20% 60.60% 85.10% 84.30% 325(3.5%)
2人気 18.00% 36.50% 48.10% 76.30% 83.50% 416(4.5%)
3人気 13.60% 26.50% 37.40% 84.40% 80.20% 494(5.3%)
4人気 9.80% 20.80% 30.00% 87.70% 77.40% 543(5.9%)
5人気 8.40% 17.50% 25.30% 94.00% 86.20% 629(6.8%)
6人気 7.10% 13.10% 21.00% 116.80% 83.50% 651(7.0%)
7人気 3.40% 8.90% 15.40% 68.80% 79.40% 700(7.6%)
8人気 2.70% 6.70% 12.40% 82.10% 75.00% 749(8.1%)
9人気 2.20% 5.00% 10.00% 84.40% 84.30% 763(8.2%)
10人気 0.90% 3.30% 6.90% 41.00% 66.10% 779(8.4%)
11人気 1.00% 3.00% 4.60% 49.90% 54.70% 701(7.6%)
12人気 0.60% 1.60% 4.50% 30.30% 62.30% 669(7.2%)
13人気 0.50% 1.60% 3.60% 67.90% 78.30% 610(6.6%)
14人気 0.00% 0.60% 2.40% 0.00% 59.70% 495(5.3%)
15人気 0.50% 1.00% 2.60% 73.00% 69.20% 389(4.2%)
16人気 0.00% 0.70% 1.90% 0.00% 55.20% 270(2.9%)
17人気 0.00% 2.10% 6.20% 0.00% 213.10% 48(0.5%)
18人気 0.00% 0.00% 0.00% 0.00% 0.00% 40(0.4%)

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

けんすけ:休み明けの信頼度を確認するために、前走からの出走間隔が90日未満の1〜3番人気の馬と比較した。
なぎさ:休み明けの馬も1〜3番人気の馬ね?
赤ペンおやじ:人気馬の比較じゃ儲からんぞいっ。
けんすけ:人気馬にしないと、能力差が激しいから。このデータの目的は、同じ人気馬でも休み明けとそうじゃない馬の信頼度(勝率、連対率、複勝率)を比較し、さらにどの程度儲かるかを単複回収率で示している。単勝と複勝は控除率が20%だから回収率が80%を超えていればまぁ合格かな。でも、主に馬連やワイドで買っている場合は、回収率は75%(控除率25%)で合格と見たほうがいい。
赤ペンおやじ:100%を割って何が合格かっ!
けんすけ:回収率は条件にあった馬を機械的に全部買った場合のデータだから、それでいいの。で、表1と2のデータを比較してみると分かるが、休み明けの方が勝率、連対率、複勝率の低下が見られる。特に1番人気は10%近く落ち込んでおり、予想通り信頼度は落ちると言えるね。
なぎさ:まぁ予想通りな展開よね。2,3番人気の連対率があまり落ちないのはなんでかしら?
けんすけ:元々1番人気ほどの信頼度がないから、下げ幅が少ないんじゃないの?
なぎさ:そうか…。次は回収率だけど、これは不思議ね。単勝回収率は余り変わらないけど、複勝回収率はがくんと落ちてるね。
けんすけ:これも休み明けの難しさなんじゃないかな。
なぎさ:と言うと?
けんすけ:単勝回収率が下がったと言うことは、2,3着には来ていると言うこと。これたある程度能力があれば可能だけど、勝つまで行かないのは本来の調子に戻っていない証拠とも言えるだろう。

■休み明けの馬の人気分布


表3.休み明けの馬の人気分布 グラフを見る
人気 出現数 偏差 重み 出現数
1 325 -11.5 0.080 26
2 416 -10.5 0.160 67
3 494 -9.5 0.240 119
4 543 -8.5 0.320 174
5 629 -7.5 0.400 252
6 651 -6.5 0.480 312
7 700 -5.5 0.560 392
8 749 -4.5 0.640 479
9 763 -3.5 0.720 549
10 779 -2.5 0.800 623
11 701 -1.5 0.880 617
12 669 -0.5 0.960 642
13 610 0.5 1.040 634
14 495 1.5 1.120 554
15 389 2.5 1.200 467
16 270 3.5 1.280 346
17 48 4.5 1.360 65
18 40 5.5 1.440 58

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

けんすけ:上の表の意味だが、単純に人気別の分布を出しても偏りが出せないため、障害レースを除く全てのレースの平均出走頭数を求め、それぞれの人気と平均出走頭数との偏差で求めた。
なぎさ:? と言うと? どうなるの?
けんすけ:レースの平均出走頭数は12.5頭となる。その数字を元に各人気における偏差を求めるだろ? すると平均頭数とのばらつきが求まるから、人気ごとの重みを計算した。それから、重みと出現数の積が平均出現数を越えている人気を求めた。
なぎさ:それが10番〜13番人気の馬なの?
けんすけ:そう言う事。休み明けの馬は10番人気から13番人気になりやすい。これはつまり、人気になりにくいと言うことになるね。
なぎさ:なんか強引に丸め込まれた気もするけど(笑)。
赤ペンおやじ:いかさまだぞいっ(笑)!
けんすけ:そんな事いっても、JRAのレースは5頭以上いないと成立しないから、どのレースでも1〜5番人気の馬は必ずいるし、苦し紛れと言われようが人気の分布が見たかったんだから仕方ないよ。正規分布にはならなかったけど、人気は元々偏ったデータだからな。
なぎさ:で、結局この表から何が言えるの?
けんすけ:つまり、休み明けの馬は人気になりにくい。それでいて10番人気から13番人気の休み明けの馬は連対率も低いし回収率も60%程度だ。だから、機械的に買ってしまうと損をするよって言いたかった。

■休み明けの馬のクラス別成績


表4.休み明けの馬のクラス分布
 グラフを見る
クラス 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数(出現率)
新馬 0.00% 0.00% 0.00% 0.00% 0.00% 0(0.0%)
未勝利 5.30% 10.70% 16.50% 72.70% 81.30% 2545(27.5%)
500万 5.60% 10.60% 16.30% 68.60% 73.50% 4126(44.5%)
1000万 5.20% 10.30% 15.30% 66.60% 79.10% 1435(15.5%)
1600万 3.80% 7.90% 10.60% 46.80% 45.10% 480(5.2%)
OPEN 5.20% 10.20% 16.40% 36.80% 77.70% 383(4.1%)
G3 5.40% 13.20% 17.80% 77.10% 47.80% 129(1.4%)
G2 5.80% 15.30% 21.90% 26.10% 45.60% 137(1.5%)
G1 5.60% 11.10% 19.40% 29.20% 55.60% 36(0.4%)

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

けんすけ:これはちょっと俺の予想とはずれた。
赤ペンおやじ:実際の馬券と同じだぞいっ!
けんすけ:うっせーっ!
なぎさ:で、どういうデータが出ると思ってたの?
けんすけ:これまで感覚的に、未勝利戦や500万下のような下級条件は、長期休養明けでも走れると思っていた。と言うのも、素質のある馬が怪我などで休養を余儀なくされて順当に勝ちあがるパターンが含まれているからだ。
なぎさ:うーん、この数値を見る限りはそうとも言い切れないね。飛びぬけて連対率が高いクラスはないよ。
けんすけ:じゃあ、G1馬がステップレースとして利用することの多い、重賞競争はどうか。
なぎさ:他のクラスに比べるとG2の信頼度が高いように思えるけど。
けんすけ:G2はG1馬がステップレースに使う事が多いので、この数値は説明がつく。でも、1年ごとにデータを見てみると、重賞競争の成績はかなりばらつきがあり、その年のOPEN馬の質に影響されやすいとも言える。
なぎさ:テイエムオペラオーとかも混ざってるんだもんね。でも、出現数を見ると1頭の馬が与える影響はさほどでもないんじゃない?
けんすけ:オペラオーの様な馬は、勝率や連対率が高いからデータには多少なりとも影響を与えるだろう。
なぎさ:そんなものかなぁ?
けんすけ:そんなもんだ。で、表4の分析に戻るけど、G2
G1の様に上級のクラスの場合、有力馬が休み明けのことも多いから当然人気になって回収率も落ちる。それが連対率や複勝率が他のクラスよりも高くても、回収率の低い理由だろう。
なぎさ:なるほどね。人気になっているからこそ、きちんと走れる状態か見極めろってことね。スペシャルウィークみたいに強い馬でも、休み明け初戦は結構取りこぼしがあったもんね。ところで、同じ重賞でもG3の単勝回収率が目立って高いような気がするけど。
けんすけ:あ、それ鵜呑みにしないほうがいいよ。
なぎさ:なんで?
赤ペンおやじ:いかさまかーっ!!
けんすけ:違うって言ってんだろ(笑)。G3の場合、特にばらつきが酷くて、2002年3月までの単勝回収率が320%あるんだ。2001年は16.6%、2000年が71.2%。これだけ差があると、G3が狙い目とはいえないだろ。
なぎさ:確かに。一見すると回収率が高そうだから、G3で休み明けばかり狙うと大損することもあるのね。
けんすけ:その点1年毎の単位で見ても、未勝利戦と500万は同じような数値で推移している。
なぎさ:ただ、めだって狙えるほどでもないね。
けんすけ:そりゃそうだろ。ただし、レース数が多いせいか出現数も多く、さっき言ったように長期休養明けの素質馬のように、能力で突破できる馬もいるから、もう少し未勝利と500万条件に焦点を当てて追加調査をしてみようと思う。

■仕上げがうまい厩舎はあるのか?


表5.休み明けの馬の厩舎ベスト10 グラフを見る
調教師名 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数
伊藤雄二 28.60% 34.70% 36.70% 179.40% 81.60% 49
松田国英 17.40% 28.30% 41.30% 122.40% 87.60% 46
沖芳夫 15.60% 26.70% 31.10% 69.60% 83.30% 45
池江泰郎 13.10% 23.00% 27.90% 151.10% 102.60% 61
藤沢和雄 11.80% 21.50% 33.30% 59.20% 80.60% 93
坂口正則 11.80% 20.60% 26.50% 215.00% 152.50% 68
松山康久 11.20% 19.10% 22.50% 69.20% 66.30% 89
河野通文 12.20% 15.60% 24.40% 129.90% 127.40% 90
宗像義忠 10.40% 15.60% 21.90% 102.00% 100.20% 96
伊藤正徳 8.40% 9.60% 25.30% 55.30% 78.90% 83

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

なぎさ:お次は厩舎別のデータ?
けんすけ:よく、仕上げの上手い厩舎と言う表現が用いられるが、これも休み明けの馬が好走する要因になるかを調査してみた。
なぎさ:やっぱり藤沢厩舎や伊藤雄二厩舎とか1流どころが名を連ねているわけ?
けんすけ:勝率や連対率では伊藤雄二厩舎がNo.1。関東の雄、藤沢厩舎は連対率や勝率もほどほど。
なぎさ:ちょっとイメージが違うよね。
けんすけ:そうなんだよ。でも、やはり関西の上位厩舎の検討が目覚しく、勝率なら松田厩舎が伊藤雄二に続いて2位。あとは信頼度と言う意味では、余り変わらないかな。
赤ペンおやじ:儲かるのはどこじゃい。
けんすけ:ダントツは坂口厩舎だね。単勝回収率も複勝回収率も抜けてる。
なぎさ:単勝回収率が200%超えてるよ。これってすごくない?
けんすけ:坂口厩舎の休み明けの馬の単勝は、とりあえず押さえておきたくなるね。
なぎさ:他に目だったところでは、池江厩舎、河野厩舎があるね。単勝回収率だけなら松田厩舎もなかなか。
けんすけ:でも、やっぱりここに名前が挙がっているのは、有名厩舎が多いから、休み明けの仕上げの妙は調教師の腕ひとつってところかな。
なぎさ:でも、藤沢厩舎みたいに、回収率の低いところもあるから、誰もが上手いと見とめるような厩舎は外しておいた方が無難ね。
けんすけ:あと、もう1点だけ有るんだけど…。
なぎさ:なに?
けんすけ:表中のデータには現れていないが、最近、牧場でしっかり乗りこんで入厩前にある程度仕上げると言うスタイルが流行っている。
赤ペンおやじ:最近よく耳にするぞいっ!
なぎさ:山元TCとかもそうよね。
けんすけ:限りある馬房を効率よく利用するためだと思うけど、今のところそれを裏付けるデータがないのでわからない。
なぎさ:牧場できっちり絞って出走させると言う事なのかな?
けんすけ:そうすると、馬体重の変動範囲を0〜+4kg程度に留めると言う事なのか? うーん、いずれにしても厩舎データからは何も言えないな。

次回はに続く…

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