競馬研究 競馬予想におけるマジックナンバー

   
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■マジックナンバー

 皆さんは「マジックナンバー」という言葉を聞いたことがあるだろうか? もちろん、特定の野球チームが優勝までに必要な勝ち星を表す数でも、プログラムコード内にある、定数化されていない数値のことではない。「記憶のマジックナンバー」のことである。記憶のマジックナンバーとは、人が一度に覚えられる事柄の数を示し、一般的に成人で7つと言われている。7つのマジックナンバーを持つ人は、同時に7つの事柄までを記憶できる。言い換えれば、瞬時に見せられたランダムな数字を7つ覚えられることになる。

 なぜ、突然こんな事を言い出したかと言えば、このマジックナンバーの存在が競馬予想に深く関係しているとにらんでいるからだ。競馬予想はご存じの通り、様々な情報を元に勝ち馬を予想する。この時、取りこまれた情報は脳で処理される。当然、取りこんだ情報を片っ端から忘れているようでは推理などおぼつかないため、記憶にとどめる必要がある。察しによい読者ならすでに気づいたことだろう。競馬予想は予想をする段階で記憶力を駆使しているゲームなのだ。

■競馬予想のプロセス

 世の中には様々な馬券術が存在するが、ここでは最も一般的だと思われる「競馬新聞を利用した予想法」を取りあげる。
 競馬新聞を使った予想法を実践する場合、人は赤ペンを片手に予想する。競馬予想において赤ペンは必須アイテムの筆頭にあげられる。新聞上に、気になる成績をマークする。あるいは不要な馬をカットする。ネガティブ、あるいはポジティブな情報を赤ペンにより浮き立たせ、大量の情報の中から拾い出す。恐らく、チェックする項目の差こそあれ、ほとんどの人が実践している予想法だと思われる。

【競馬予想のプロセス=フィルタリング】

  • 馬柱の情報の中で有用なもの、気になるものをマーキングする
  • マイナス材料にマーキングする
  • 不要な馬を消す
  • 気になる馬をチェックする

 上であげたプロセス(フィルタリング)は、競馬新聞の膨大な情報の中から、自分にとって必要な情報を整理しているにすぎない。本当の予想はその後にあり、整理した情報を元に軸馬を選んだり、不要な馬を絞り込んだりする作業がある(取捨選択)。フィルタリングプロセスが完了した段階では、5、6頭の馬が馬券の候補に挙がっており、予想が不得手な人はこの段階でBOX馬券に走ってしまうこともある。もちろん、この方法も誤りではないが、点数が多くなるため、プラスの収支に持っていくのが難しくなる。そのため、どうしても穴傾向となり、外れやすくなる。この方法できちんと利益を上げている人は、レースの選択眼がしっかりした人だけだろう。やみくもにあらゆるレースに手を出す人の場合、散々たる結果が待っている。

■質の高い予想をするために

 さて、より質の高い予想をするためには、フィルタリングの段階できちんと情報を整理することが大切である。なぜなら、冒頭で述べた通り、競馬予想には「脳の一時記憶」にとどめた情報を活用していると思われるためである。記憶である以上、マジックナンバーが関係しており、脳内で処理しやすいように、6頭前後までふるい落としを掛けている。18頭フルゲートの馬柱に何も手を加えずに予想をするより、有力馬6頭の中から軸馬を見つける方が容易である。小生も馬柱に馬名がずらりと名を連ねているのはつらいため、はじめに不要な馬を消したり、有力馬に○をつける作業を行う。
 この作業は人によりまちまちであるが、より一般的な有力馬をあげていく方法だと思われる。その理由として、いきなり理由もなく馬柱にある馬名を消せる人は希であり、自分が重要視する要素(能力、成績など)をチェックする過程で「軽視する馬」と「重視する馬」に分けられていくのである。
 ところで、マジックナンバーの考え方によれば、人が考えをまとめやすい数は3〜5つである。ここでいう数とは、個別の数字を意味するものではなく、同じ情報をまとめたグループ(チャンク)のことを指す。分かりやすく実例をあげると、

(a)持ち時計の優秀なグループ
(b)持ち時計の平凡なグループ
(c)持ち時計のないグループ

の様に、比較したい対象の中でのグループ分けのことを指す。小生はスピード指数を利用しているが、最も高い指数をピンクとし、そこから10落ちるものをオレンジ、さらに10落ちるものを黄色に色分けしている。これも情報を整理しやすいようにグループ化しているといえる。もちろん、そのままの指数を使った方が情報量は多い。スピード指数の場合、通常20〜110前後の指数で表記されることが多い。この場合、90個のグループに分けられることになるが、さすがにこれだけの情報量を一度に処理できる人はいないだろう。

 別のグループ化の例を挙げると、「G1競走におけるステップレース」があげられる。例として2004年4月18日に行われた「皐月賞」を取りあげてみよう。皐月賞は3歳牡馬クラシックの第1弾であり、そのステップレースとして「弥生賞」、「スプリングS」、「若葉賞」、「毎日杯」などがある。特に「弥生賞」と「スプリングS」は皐月賞トライアルとしてより重視されている。以下の表は、皐月賞出走馬をステップレースごとに分けたものである。

例:2004年4月18日 皐月賞 ステップレース別
馬番 馬名 皐月賞着順 皐月賞人気 前走レース名 前走着順
14 ダイワメジャー 1着 10人 スプリングS 3着
18 コスモバルク 2着 1人 弥生賞 1着
8 メイショウボーラー 3着 6人 弥生賞 2着
3 コスモサンビーム 4着 3人 スプリングS 5着
9 ミスティックエイジ

5着

8人 スプリングS 11着
13 メテオバースト 6着 13人 弥生賞 3着
1 マイネルマクロス 7着 11人 毎日杯 3着
12 マイネルブルック 8着 7人 きさらぎ賞 1着
5 フォーカルポイント 9着 4人 弥生賞 5着
10 アポインテッドデイ 10着 16人 スプリングS 4着
11 グレイトジャーニー 11着 14人 弥生賞 7着
15 マイネルデュプレ 12着 12人 共同通信杯 1着
6 キョウワスプレンダ 13着 8人 スプリングS 2着
16 ハーツクライ 14着 5人 若葉S 1着
2 メイショウムネノリ 15着 17人 伏竜S 1着
7 ブラックタイド 16着 2人 スプリングS 1着
17 スズカマンボ 17着 15人 若葉S 2着
4 カリプソパンチ 18着 18人 アーリントンC 2着

 このレースは弥生賞で堂々とした勝ちっぷりを見せた「コスモバルク 」が1番人気に支持されたが、勝ったのは「スプリングS」3着の「ダイワメジャー 」であった。ステップレースを元に予想をする方法は、G1では一般的な方法である。このレースは2番人気に武豊騎乗の「ブラックタイド」がいたが、この馬は「スプリングS」の勝ち馬である。詰まるところ、皐月賞というレースは、「弥生賞組」と「スプリングS組」の比較であったといえる。
 18頭を一度に比較するのは骨の折れる仕事だが、各ステップレースごとの上位馬との比較であれば、さほど難しい作業ではない。ステップレースごとのレベルの比較、それぞれのレースの中での比較を行えば、混戦に見えたこのレースも比較的容易に予想が行える。

■マジックナンバーを意識したフィルタリング

 質の高い予想をするためには、マジックナンバーを意識したフィルタリングが重要である。皐月賞のステップレースの例を見るまでもなく、有力馬を漠然とあげるよりは、なにかの目的意識を持ってグループ分けした方が、よりよい結果が得られる。ここでの最終的な目的は、有力馬を5頭前後まで絞ることにある。もちろん、いきなり18頭を5頭まで絞れれば、それに越したことはないかもしれない。しかし、絞り込む理由に根拠がないのであれば、当てずっぽうの予想に等しく、予想の精度が落ちることは言うまでもない。
 最終目標である5頭は、マジックナンバーを意識し、最後の推理をまとめやすくするために他ならないが、そこに至る過程もマジックナンバーを利用した方が良いに超したことがない。マジックナンバーを意識したフィルタリングは、それこそあらゆるものが考えられるわけで、何を重視するかは各人で検討をして頂きたい。
 小生の馬券術を例にとれば、以下のようなフィルタリングのためのグループが考えられる。

  • スピード指数別グループ
  • 前走のステップレース別グループ
  • 脚質別グループ
  • 適性別グループ

■まとめ

 競馬予想は情報の取捨選択が基本である。やみくもに赤ペンでマーキングするより、次の推理のプロセスがやりやすいように整理した方が有益である。そのためには、脳が一度に把握できる情報量(マジックナンバー)を意識した整理法が肝心であると考える。
 今回のコラムで上げた方法論を、実際の予想法に昇華させるまでにはまだ研究を続ける必要があるが、自分の馬券術を見直すという観点でも意味がある。

参考:「記憶のマジックナンバー7±2とドメイン名の考え方」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000330.html

参考:短期記憶
http://www.mental-navi.net/public/info/arutu/arutu_07.html

 
 

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