File.06 [休み明けの馬の信頼性] 勝利の方程式

活用法

休み明けの馬の信頼性 その2

最近G1でも休み明けの馬をみかけるけど、信用していいのか?

■休み明けは牡牝どちらが走るのか

けんすけ:牝馬は牡より仕上がりやすいって言われているけど本当か? それを検証してみたいと思う。ちなみに牡馬混合戦の場合、能力に劣る牝馬に不利になる可能性があるので、牝馬は牝馬限定戦のデータで出した。
なぎさ:これもよく聞く話よね。で、どうだったの?
けんすけ:結論から言うと牡馬の方が勝率、連対率共に高いわけで、牝馬の方が仕上がりやすいと言うのは俗説だと言う事が改めて浮き彫りになった。
なぎさ:そもそもなんで、牝馬の方が仕上がりやすいと思われてたのかなぁ。
けんすけ:体調の変化が激しいからじゃないか。尤も、体調の変化が激しいと言うのも昔からの俗説で本当に牡馬よりも体調管理が難しいのかはわからない。調べようがないから、調べるつもりもないけどね。
なぎさ:そうなのか。そう言えば、牝馬の単勝回収率は特に酷いね。
けんすけ:確かに。休み明けの牝馬の単勝馬券は買うなって事かな。そうそう、1ついい忘れたけど、牝馬限定戦の多くは未勝利や500万に多い。このクラスの限定戦はどの馬が勝ってもおかしくないようなレベルの低いレースが多いからな。レベルの差が数字に出ている可能性もあるね。

表6.休み明けの馬性別順(牝馬は限定戦のみ) グラフを見る
性別 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数
 牡  6.00% 12.00% 18.00% 74.90% 79.70% 5757 (62.1%)
 牝  5.00% 9.10% 14.40% 39.50% 65.30% 1159 (12.5%)
 騙  5.80% 9.70% 13.80% 75.20% 63.40% 413 (4.5%)

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

■休み明けマイナス体重はやはりまずいのか?


表7.休み明けの体重増減 グラフを見る
体重増減 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数
-9kg以上 3.10% 5.90% 10.30% 43.00% 61.70% 1081
-8kg以下 4.50% 9.00% 14.70% 53.60% 72.80% 796
-4kg以下 4.50% 12.20% 17.30% 33.50% 64.70% 469
-2kg以下 4.20% 9.20% 14.70% 64.00% 62.20% 524
±0kg〜+4kg 6.50% 12.70% 19.00% 77.00% 80.30% 1975
+10kg未満 6.20% 11.40% 15.90% 64.30% 78.80% 1184
+15kg以下 5.30% 11.30% 17.90% 53.40% 76.90% 1537
+20kg以下 6.00% 10.30% 15.60% 81.50% 71.20% 928
+21kg以上 5.40% 10.70% 15.10% 116.50% 84.80% 777

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

けんすけ:いやぁ、この分析は価値があるよ。
なぎさ:自我自賛(笑)?
けんすけ:と言うわけでもないけど、これも昔から言われている事だし、パドック解説者がよく触れる項目でも有るんだけど…。
なぎさ:休み明けで体重を減らすのはおかしいと言う奴でしょ?
けんすけ:そうそう。まず、休み明けと言うのはプラス体重が前提と言う定義に基づき、馬体重が前走から±0kg〜+4kgの馬を基準とした。
なぎさ:休み明けとしては一般的なのかな?
けんすけ:意識的な問題だと思うが、体重変動が±0kg〜+4kg位なら無条件で消さないだろう。
赤ペンおやじ:わしは休み明けは無条件で消すぞいっ!
けんすけ:こういうのは例外(笑)。
なぎさ:ところで、このデータのどこがすごいの?
けんすけ:まず、勝率と連対率に注目して欲しいんだけど、休み明けマイナス体重だった馬の連対率、勝率ともに減少傾向にあるだろ。
なぎさ:特に-9kg以上減った馬はすごいね。半分以下になってるよ。と言う事は、休み明けのマイナス体重は通説通り、信頼がおけないと言う事なの?
けんすけ:最近は、山元TCに代表されるような育成牧場(?)とかに短期放牧に出るケースもあるし、牧場でしっかり乗りこんで余り増えない様にしてるんだろう。それでも、厩舎にいるときよりは体重が増えてもおかしくないわけで、マイナス体重で出走してくる事は常識的に見ても変だ。
なぎさ:でも、運動とかさせてるなら、体重も減るんじゃない? 牧場からの長距離輸送とかも有るし。
けんすけ:放牧の目的は心身のリフレッシュだから、運動はさせても広広とした放牧地で、日がな一日草食ってるのが普通だろ。狭い厩に押し込められて、朝晩決まった量の飼葉だけしか食べられないとなると、体重の増え方にも差は出るはず。
なぎさ:そっか。温泉でのんびりして帰ってくるのと同じと考えればいいのね。
赤ペンおやじ:体重が増えるって事か?
なぎさ:(キッ!)
けんすけ:次に、休み明け馬体重増のケースだけど、若干基準とした±0kg〜+4kg増の馬よりは連対率が落ちてはいるが、馬体重が+21kg以上になっても大きな変化はない。
なぎさ:え? それってどういう事?
けんすけ:休み明け体重が落ち込んでいるのは極自然な事で、プラスであれば何キロ増えていても信頼度は変わらないと言える。むしろ数字が大きければ、大きいほど心理的な影響があるのか、人気がなくなるから回収率は高くなる。
なぎさ:+21kg以上の馬の単勝回収率が116%もあるの!? これなら機械的に買っても儲かるよ。
けんすけ:結論を言えば、休み明けのマイナス体重は割り引き。プラス体重は数字に関わらず評価は同じ。
なぎさ:+21kg以上増えてる場合は、積極的に単勝を狙えでしょ?

■休み明けの降級馬


表8.休み明けの時に前走クラスから降級した馬 グラフを見る
体重増減 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数
全体 5.30% 10.60% 16.00% 66.30% 74.40% 9271
1000万→ 500万 2.10% 6.40% 10.60% 42.80% 77.70% 47
1600万→1000万 9.90% 18.10% 24.00% 113.00% 104.60% 171

表9.前走クラスから降級した馬
 グラフを見る
体重増減 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数
全体 7.90% 15.90% 23.80% 72.20% 73.40% 80533
1000万→ 500万 9.50% 17.60% 29.20% 85.80% 81.60% 506
1600万→1000万 15.10% 26.20% 34.90% 64.50% 64.40% 126

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

けんすけ:クラス編成のある7月になると、競馬新聞やTVとかでも話題に上るのが降級馬。今回はただの降級馬ではなく、休み明けの降級馬を取り上げたいと思う。
なぎさ:それって、休む前は1000万条件で、休み明けで500万に降級していた馬の事?
赤ペンおやじ:なんか厩舎の意図を感じるぞいっ!
けんすけ:もともと降級馬は注目を集めやすい上、休み明け後に降級していると、厩舎がわざと休ませた様に感じてしまう。今回はその検証だな。
なぎさ:具体的にはどうするの?
けんすけ:1000万→500万に降格した馬と1600万→1000万に降格した馬を、休み明けと休み明けじゃない馬で比較してみた。
なぎさ:勝率も連対率も休み明けじゃない馬の方が高いね。休み明けのハンデがあるからかなぁ?
けんすけ:そうだと思う。特に1000万→500万に降格した馬の落ち込みが激しい。思うに500万に突き落とされる様な馬は、心底能力不足で1000万のクラスの壁にぶち当たったためだと思われる。
なぎさ:確かに500万条件には、酷い成績の馬が多いものね。
けんすけ:1600万→1000万に降級した馬の場合、やはり素養の高い馬が500万に降格した馬より多く含まれているせいか、高い連対率を維持している。俺が特に注目したいのは、単勝回収率と複勝回収率で、ともに100%を超えている。
なぎさ:休み明けって事で割り引いてるのかな?
けんすけ:だろうね。1600万ってクラスは、番組が少ないせいかOPENやG3へ格上挑戦する馬もいる。能力の高い馬の場合、上手く着賞金を狙って稼げるから、降級しても高いアベレージを維持できる。しかも、休み明け割引と言う心理的な効果も加わって人気も落ちるから回収率が高いんだろう。
なぎさ:なるほどね。と言う事は、1600万→1000万に降格した馬の中には、賞金狙いの確信犯がいるって事ね。
けんすけ:休み明けじゃない1600万→1000万の降級馬の勝率と連対率は、かなり率が高いから調教師は狙ってやってる人もいると思う。でも、この場合、みんなが注目して人気になりやすいから回収率は低い。狙い目は群集心理の裏を書いた休み明けの降級馬って事だな。

■休養前の着順


表10.休み明けの馬が休養に入る前の着順別
 グラフを見る
クラス 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数(出現率)
1着 6.30% 12.20% 19.00% 49.50% 67.60% 1054
2着 13.40% 23.60% 31.50% 69.20% 78.00% 492
3着 10.10% 18.40% 28.00% 63.80% 86.20% 554
4〜5着 6.80% 13.90% 21.00% 89.20% 74.00% 1140
6〜9着 4.00% 9.20% 15.30% 62.80% 82.30% 2696
10着以下 3.70% 6.70% 9.70% 66.70% 67.70% 3335

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

けんすけ:休養に入る前の着順に注目してみた。休養前、調子がよかった馬は休み明けでも成績がいいのか、あるいは逆に成績の悪かった馬はリフレッシュできて成績がよくなるのか。
なぎさ:なるほど。より一層馬券に近いところを付いてきたのね。
赤ペンおやじ:なんじゃいっ! どれも回収率が低いぞいっ!
なぎさ:しかも意外。前走1着だった馬の勝率低いね。
けんすけ:データを見る限り前走2,3着の馬の連対率が一番いい。これも不思議なところなんだけど。
なぎさ:前走10着だった馬は…あらら、これも成績悪いね。リフレッシュ効果はなかったのかな?
けんすけ:能力の低い馬も含まれてるからな。
なぎさ:結局、このデータからは何が言えるの?
けんすけ:回収率が軒並み低いから、前走着順だけで狙ってはいけないと言うこと。それと、前走2,3着してた馬は連対率とかが高いから、休み明けと言うだけで割り引く必要はないということかな。
なぎさ:でも、回収率は余り高くないよね。
けんすけ:連対率が高くて、回収率が低いと言うことは人気サイドしか来てないということだろ。と言うことは休み明けで人気になってれば、着順は余り問題ないってことじゃないか。
なぎさ:なんか歯切れ悪いな。
けんすけ:このデータは余り意味のある数字が出てないからな。休み明けと前走着順は関係ないとだけ解釈すればいいんじゃないかな。

■レース間隔による成績の変化


表11.前走からのレース間隔別成績の推移 グラフを見る
調教師名 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 出現数
連闘 7.10% 14.30% 21.80% 65.60% 72.50% 6915
中1〜3週 7.80% 15.90% 23.80% 69.90% 72.40% 51696
中4〜6週 8.50% 16.50% 24.40% 80.30% 76.30% 18250
中7〜9週 7.50% 14.70% 22.30% 63.50% 70.10% 3025
中10〜11週 8.50% 15.20% 21.50% 80.10% 75.70% 1041
3ヶ月〜 7.70% 14.70% 20.20% 81.70% 72.90% 600
6ヶ月〜 5.80% 10.90% 16.90% 72.20% 77.30% 2046
9ヶ月〜 5.30% 10.60% 16.20% 70.40% 77.10% 5742
1年以上 4.30% 8.00% 11.70% 43.50% 58.20% 489

※データ集計期間は2000年1月5日〜2002年3月17日

なぎさ:休み明けを取り扱っているのに、いまさらレース間隔を見る必要があるの?
けんすけ:最後のまとめみたいなもんだけど、レース間隔別にどういう成績の変化が見られるかを確認しておきたかった。今回、休み明けを3ヶ月と定義して色々検証してきたけど、1年以上休養した馬とどのぐらい違うかも知りたかったしな。
なぎさ:ふ〜ん。この表を見ると一般的なレース感覚は中1週〜3週と言うことになるね。
赤ペンおやじ:なんでじゃーっ! そんなもんどこにも買い取らんぞいっ!
なぎさ:え? だって、出現数が一番多いじゃない。
けんすけ:その通り。まぁその期間が一番標準的なレース間隔だろうな。中4〜6週もそれに続いているが、出現数では中1〜3週に比べて1/3程度だ。
なぎさ:じゃあ中1〜3週のデータを基準に考えるのね。
けんすけ:そう言う事になる。勝率、連対率をレース間隔ごとに眺めていくと、6ヶ月以上の間隔が開くとどちらも数字が落ち込んでいるのは分かる。
なぎさ:そういえば出現数も6ヶ月〜1年未満が一番多くなってるよね。本当の意味の休み明けって6ヶ月以上を指すんじゃないの?
けんすけ:なかなか鋭いね。俺もそうだと思うよ。
なぎさ:じゃあ、今までのデータは無駄なの?
けんすけ:新聞やTargetなどでも休み明けとして扱われるようになるのが3ヶ月以上なんだ。だから、あえて休み明けを3ヶ月以上と定義した。でも、データを見る限り急激なデータの降下は見られず、実際には目くじらを立てるほどではないと思うはずだ。
なぎさ:初めにこのデータを出してくれれば良かったのに。
けんすけ:そういう意見もある(笑)。
なぎさ:ところで、6ヶ月以上の休み明けと、3〜6ヶ月以上の休み明けの馬にはどんな差があるのかな?
けんすけ:休みの意味が違うんじゃないかな。3〜6ヶ月程度の休みを明ける意味は、レース番組の関係で秋まで休ませる。あるいは得意の夏競馬に焦点を合わせるための放牧と言った意味が強いと思う。それに対して6ヶ月以上の休みを必要とする馬の場合、大概が脚部不安による療養など、使いたくても使えない事情があるんじゃないかな。
なぎさ:なるほどね。確かに骨折して3ヶ月で戻ってくるなんて、早々ないものね。
けんすけ:確かに能力がずば抜けた馬の場合、1年以上休んでいきなり勝つなんて芸当(代表例:トウカイテイオー)が出来るだろうけど、普通の馬には無理だろ。だから、休み明けって言うだけで毛嫌いせずに、調整過程や休んでいた理由などをしっかり考える必要があると思う。

■まとめ

なぎさ:2週に渡って取り上げてきた「休み明けの馬」だけど、なにかまとめはある?
赤ペンおやじ:休み明け、無条件で切〜るっ!
なぎさ:もうっ! 今までなに聞いてたのっ!
赤ペンおやじ:ふはははははっ! じゃあ、6ヶ月以上の休み明け切〜るっ!
なぎさ:ふぅ。
けんすけ:1つめは通説は疑って掛かると言う事かな。もっと正確に言えば、「意見と事実の区別をする」と言う事。俗説通説が誰かの意見なのか、それとも事実を語っているのかを判断するには、今回やったように数字を見るほかはない。競馬評論家と称する連中がテレビや新聞で言っている事も、あくまで意見だからどんなに説得力があっても、自分で確認するまでは信じないことだね。でも意見に耳を傾けるのは重要だよ。
なぎさ:それを言っちゃうと、これまで話してきた事も意見になっちゃうんじゃない(笑)。
赤ペンおやじ:そうだぞいっ! 小僧も競馬評論家と称する輩じゃないのか?
けんすけ:その通り…って俺は評論家じゃないが(笑)。正しく物事を語っているのは数字だけだから、見る人が見れば俺と違った結論を出すかもしれない。あとは、きちんと検証をするかどうかに掛かっている。
なぎさ:う〜ん、責任逃れのように聞こえるけど。
けんすけ:今回、もっと細かく分析しようと思えば出来たが、それをやってしまうと数字で誘導しているとも取られかねない。特に回収率に大きく影響するデータの場合、闇雲に狙う可能性もあるだろ。そうなると怪しげな予想法と変わらないからな。あくまで傾向を出すのと、通説の検証にとどめた。
なぎさ:数字を信じちゃいけないの?
けんすけ:こういう傾向があるとだけ頭に入れておけばいいと思う。必ずそうなるわけじゃない。でも、数字は1つの真実でもあるから通説よりは信頼度が高い。
なぎさ:もう、どっちを信じればいいの?
けんすけ:数字が意味する事、傾向を頭に入れた上で、パドック解説者や評論家が言う意見や通説に惑わされず、自分の頭で考えて予想をすべきだ。休み明けは無条件で消せと言うのも誰かが言い出した意見だし、馬の中には休み明けでいきなり走る馬もいっぱいいる。
なぎさ:それとは逆に叩き良化型の馬もいるもんね。
けんすけ:Mの法則では馬のタイプを3種類に分け、休み明けいきなり走るタイプをL系と分類している。逆に叩き良化型はC系だ。馬にも個性がある事を忘れずに、データを踏まえた上で予想を組み立てれば悔しい思いをする事も少なくなるかも。
なぎさ:最後は自分の頭で考えろってことか…。
けんすけ:まぁね。少なくとも自分のお金を掛けて馬券を買うんだから、納得いくまで考えた方がいいと思うよ。
なぎさ:じゃ、そろそろお開きにしますか。

HomeMenuBack