要件定義とインド人技術者
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技術系ニュースサイトに、「インドのオフショア開発、日本企業案件の成長率は330%」という記事があった。オフショアとは海外にソフトウェアの開発を委託することを指す。何年も前から、インドはIT産業に力を入れており、インド人技術者は米国では数多くの実績を作り出している。
ソフトウェア開発と言っても、日本の場合店頭に売っているソフトではなく、企業向けのシステム開発を指すことが多い。吉田もソフトウェア技術者であるが、パッケージソフトや企業向けシステム開発者ではない。「組み込みシステム」と呼ばれるハードウェアに組み込むソフトを書いている。もちろん、電源やCPU基盤などのハードウェアの設計も行うが、どちらかと言えばソフトを書いている時間の方が長い。
従って、直接システム開発の現場を知っているわけではない。だが、ソフトウェアに関わるものとして、インドや中国のソフト技術者の動向は気になる。もとの記事によると、
「インドには2003年12月時点で、CMMレベル5を取得している企業が65社存在しており、技術力、品質、コスト、人材の厚みなどで総合的にソフトウェア開発における強みを発揮している。欧米顧客との実績や資金力もあり、今後専門家やコンサルタントを雇い入れて日本市場にアプローチしてくるだろう」
とある。中国については、低品質だが人件費の安い市場に大量投入するというケースがほとんどだが、インドについては高品質で低価格、米国での実績も豊富ということもあり、今後はもっとも驚異となることは誰の目にも明かである。
だが、もう一つ気になる点として、「インドのIT企業は要求仕様が明確になっている案件について「驚異的な生産性」を発揮する」という記事である。
日本の場合、要件定義が不明確な状態で開発がスタートするケースが多く、設計段階で設計者が顧客との打ち合わせにより、仕様を明確にしていくという物件がほとんどである。吉田が携わっている組み込みシステム業界も、最初からきっちり仕様が決まることは少ない。派遣の仕事をしている友人のケースでは、ある企業のネットショップの案件があり、これが打ち合わせのたびに仕様がころころ変わるというひどい物件だったそうだ。
完璧な要件定義をするには、顧客やユーザー側のニーズが明確になっている必要がある。しかし、この作業を顧客やユーザーに要求するのは厳しい。そのため、技術者が直接顧客から必要な情報を引き出すことになる。日本の場合、システムを発注する側が技術者でない場合や、専門外の場合も少なくなく、顧客側で要件定義をしたくてもそれができない場合がほとんどなのだ(なかにはきちんと分かっている人もいるが、はじめからきっちりとした仕様書を渡されることは少ないので、結局対話による要件定義が必要になる)。
吉田はいま、シンプルぱっとVer2.00と自動運転ソフトの設計を行っているが、要件定義は難航しそうである。特に自動運転ソフトの場合、知名度が上がるにつれ、様々なユーザーが増えてくるため、ニーズが多様化する。この時、基本設計とは全く違う要件がくると、破綻する。
シンプルぱっとの場合、自動運転はあくまでもタイマー予約機能としてスタートした。この時、要望を出した方との話し合いで、投資競馬には対応しないと結論を導いたのだが、結局は不完全ながらも投資競馬にも対応する形になっている。基本設計が食い違っているため、2番人気の単純追い上げなどの買い目を作る場合には、同じ買い目を何度も作る必要があるなど、不都合が生じている。
それ故、投資競馬を前提としたソフトの場合、いかに要件定義を行うかが鍵になってくる。要望ランキングなども参考になるが、掲示板等でまったく違う思想が提示されることもあり、頭の痛い限りである。
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