Nintendo Wiiに学ぶ設計思想 その2

Posted on :| コメント (0) | トラックバック (0)

 前回のエントリー(Nintendo Wii/DSに見る設計思想)で、次世代機であるWiiとPS3などの総括的な比較を行いました。今回はWii本体に絞って、 設計思想の重要性について考えてみたいと思います。
 ゲーム関連サイトでもない競馬三昧であえてWiiを追いかけるのは、設計思想の重要性を再認識する最適なサンプルだからです。 ソフトウェアの設計に携わるものとして、非常に参考になります。

 Wiiの設計思想については以下の記事が参考になります。

 Wiiに限らず任天堂の製品には「枯れた技術の水平思考」という思想が盛り込まれています。 平たく言うと、技術的にはこなれていて(最新技術でない)、これをアイディアでよりよいものにしようと言うことです。 PS3やXBOX360がマルチコア、マルチスレッドの最新アーキテクチャを追求したのに対し、Wiiはシングルコアで、 プロセッサーの高速化よりも低消費電力を重視しました。Wiiが17W以下(スタンバイ10W以下)の消費電力なのに対し、 PS3は380W以下(実効200W程度)の消費電力があります。こたつを強にすると500W程度あるので、 暖房器具と揶揄されるのもいた仕方ありません(200WならPC並ですが)。

 この低消費電力はWiiの重要な設計思想に繋がっています。

 前回のエントリーでも触れましたが、Wiiは「ゲーム人口の拡大」をミッションとしています。 その目的にそった設計思想となっています。

■Wiiのミッション

  • ゲーム人口の拡大を最大の目的とする
  • まず、家庭の中のゲーム人口を増やす(普段、ゲームになじみのない人にとにかく使ってもらう)
  • 家庭の中で嫌われないようにする
  • 毎日電源を入れてもらう
  • ソフトハウス側の開発コストを軽減し、ゲームを作りやすい環境にする

■Wiiの設計思想

  • 家族全員の集まる場所(リビング等)で邪魔者にされないように、筐体は可能な限り小さく
  • 毎日電源を入れてもらうために、WiiConnect24でネットワークから情報をダウンロード
  • ゲームをしない人に受け入れてもらうために、ゲームと等価の立場のチャンネル
  • 複雑化するゲームコンソールのコントローラの前面見直し(リモコン+ヌンチャク)
  • 起動をとにかく早くする(毎日電源を入れるのが億劫にならないように)
  • コミュニケーションを手助けするWii伝言板とMii(自分の似顔絵を使ってゲームする仕組み)
  • 任天堂のノウハウを提供し、豊富なライブラリで簡単にゲームが作れるようにする
  • Wiiショッピングにより、ソフトウェア供給に幅を持たせる(ちょっとしたゲームを低価格で提供できる)

 ユーザーが触れるのはゲーム機の「機能」ですが、それぞれの機能の方向性は設計思想により決まります。ひとつひとつの設計思想は、 その製品が持つミッションによって決まります。

 つまり、Wiiの場合、縮小するゲーム市場に歯止めを掛けるという大きなミッションがあり、 そのためにどうすればミッションを達成できるかとことん考えられています。それが設計思想に受け継がれるわけです。
 下記が設計思想の根幹といえます。

  • 家族に嫌われない(特に母親)
  • 毎日電源を入れてもらう
  • ゲームで遊ばない人ととにかく接触を持つ

 さて、拙作のシンプルぱっと2の場合はどうでしょうか?

■シンプルぱっと2のミッション

  • 一人一人にマッチした競馬プラットフォームを提供する
  • 上記をできるだけ分かりやすく、シンプルに実現する

■シンプルぱっと2の設計思想

  • 本体機能を厳選し、シンプルに保つ
  • 設定項目を減らし、誰にでもすぐ使えるようにする
  • スクリプト等でカスタマイズ可能にする

 基本機能については、設計思想にかなり忠実であると思っていますが、自動運転については、最期まで悩みました。そのあたりが、 取っつきにくさに繋がっていると思っています。元々、自動運転専用ソフトを別に設計するつもりでいたのもあります。

 達成すべきミッションがあり、それに基づきどう設計していくか、Wiiはよくできていますね。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメント

コメントフォームに記入し投稿してください





Search
最近の記事
カテゴリー
過去の記事
Comments
TrackBacks
Feed
Powered by