競馬の今後を考える その2

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 昨日に引き続き、競馬の今後を考えてみます。 まずは、JRAの事業報告書に書かれた内容を吟味してみたいと思います。なお、H18年度版がないので、H17年度のものを利用します。

■JRAが抱えている課題

  • 1997年をピークに、連続して売り上げが落ちている。ここ数年は3兆円のラインを割ってしまった
  • 新規顧客の獲得(平均年齢が上がっており、新規の顧客をつかめていない)

 詰まるところ、競馬は全国的に縮小傾向にあるといえます。地方はもっと悲惨で、 SPAT4の南関東競馬を除くと財政難から開催を取りやめる自治体も出ています。中央競馬もその縮小の影響を受けており、 さまざまな努力により状況の改善に努めていることが、事業報告書からも見て取れます。

■H17年度事業報告書にみるJRAの営業努力

  • 電話投票会員への手厚いサポート(即PAT開始、携帯版IPATの強化、携帯アプリの提供、回線の増強など)
  • 競馬場環境の改善(iSpotの設置、ホースレースプレビュなど)
  • 番組改善(コスモバルクなどの地方馬の参戦しやすい環境作り、国際化への働きかけなど)
  • はくぼ競馬の開催(効果は疑問)
  • グリーンチャンネルによる全パトロールビデオ放映による公正性の確保
  • 各種パブリシティの実施により若年層の獲得を図った(中居CMはまったく印象に残りませんでした>電通さん)
  • ウィンズでの発売レース(他場開催)の拡大
  • IPAT促進のために馬券道場を推進
  • 新規ファン獲得のために「競馬教室」を開催
  • 携帯版JRAウェブサイトの開設
  • ウィンズ、競馬場の顧客サービスの見直し
  • H18年度の東京開催のターフビジョン仕様決定(世界最大とか言ってましたね)
  • IPATオッズ投票の提供(結構できがいいと思いました)
  • 各種イベントの開催(地元サービスとしての花火大会他)

 こうしてみるとJRAもさまざまな手を尽くしていることが分かります。その効果のほどは別として、 企業努力はしていると評価しても良いと思います。事業報告書によると、Big Timeと銘打ったCMは若年層へのアピールが主目的だったようです。ここ数年はスマップメンバーなどを使い、 20代ファンの心をつかもうと躍起になっていることが分かります。

 ここで問題になるのは、なぜ今の20代は競馬をやらないのでしょう。実際にシンドロームでオフ会をやったときに集まるのは吉田より年上が多いです。 ちなみに吉田は34歳になりました(笑)。シンプルぱっと2のユーザー層もシンドロームの会員層も30代以上が多いようです。 シンプルぱっと2の顧客層は年齢を取っているわけではないので、はっきりとはしませんが、 さまざまなサポートをしているのは間違いなく30代以降の方に対してです。

 ゲーム業界も市場縮小傾向にあり、問題意識を持った任天堂がNintendoDSとWiiで新規顧客層(シルバー世代)や、 休眠層(30代以降)の掘り出しに躍起になっています。ゲーム市場の年代は10?30代前半でしょう。つまり、 競馬が欲している若年層がゲーム市場とかぶります。

 競馬に限らずエンターテイメント産業の衰退は、趣味や娯楽の多様化により起っていると言われています。 LifeHacks系のカテゴリーでも何度か扱いましたが、余暇の選択の幅が飛躍的に広がった一方で、 時間というリソースは昔から変わりません。余暇に使えた時間が、仕事に取られている可能性もあります(吉田はこのケースです)。

■競馬が抱える構造的な問題

 吉田は20代前半で競馬をはじめました。当時は禁止事項でしたが、大学生の頃にはじめて馬券を買いました。 競馬好きの友人に引きづられる様な形です。当時はTARGETってなに? スーパーパドックって? スピード指数ってなによ?  という状態だったのが、競馬サイトを開設し、ソフトや本の出版をするまでに至ってます。
 馬券収支がプラスになるまでには、多くの時間を研究にあてました。必勝本の類も結構買いあさりました。 はじめにスピード指数を使うようになったので、あれこれとソフトを買いあさることはありませんでしたが、自分で作ったので、 かなりの時間を投資してきたと思います。

 「競馬にはドラマがある」 「競馬にはロマンがある」

 こんなうたい文句がTV CMなどで流されることがあります。でも、競馬の本質がギャンブルである以上、儲けこそが全てです。 同じく身近なギャンブルであるパチンコは、儲けに特化しているものでしょう(少なくとも吉田は、パチンコ、 パチスロがおもしろいと感じたことは一度もありません)。

 しかし、競馬でプラス収支=勝ち組になるには非常に大変です。これは競馬に限らず、株や不動産、為替や先物でも同じです。 ゲームに勝つには、そのゲームのルールや攻略法を熟知する必要があります。投資詐欺の被害者として登場する人は、 その世界のこともゲームのこともまったく知らないずぶの素人です。この手の人は、 努力せずに儲けようとしたため痛い目に遭っていると言っていいでしょう。
 くり返して言いますが、「ゲームに勝つには知識を身につける必要」があります。

■どうやったら新規の顧客をつかめるか

 競馬をはじめる人は、当然あたり馬券をつかみたいと思っている人です。 吉田は馬が好きという理由で競馬をしている人を見たことがありません。馬好きなら直接馬に触れられる乗馬などに流れるでしょう。 競馬ファンの馬好きは、「競馬を通じて馬が好きになった」に過ぎません。
 あたり馬券を取るには、ゲームに勝てるだけの知識を身につける必要があります。競馬をはじめるにあたって、 ここが第一のネックとなっています。

 世の中には競馬専門誌、馬券指南本などの類がたくさん販売されています。競馬専門誌の代表である「競馬新聞」を見ても、 競馬のことが分かるわけでも、勝てるようになるわけでもありません。専門家を名乗る人が、新聞、TV、 ラジオで自分の予想を好き放題言っているだけでは、新しく競馬に入ってきた人が正しい知識を身につけるのは困難でしょう。予想があたるなら、 はじめは予想に乗っかるという手もありますが、それもできません。
 馬券を当てるためには独学で勉強し、勝てるようになるまで勉強や研究に時間を費やす必要があります。

 競馬の本質がギャンブルである以上、馬券の勝ち負けがゲームを続ける動機に直結します。確かに運の要素もありますが、 誕生日や好きな数字だけで馬券を取るのと、 素人がパチンコ台の前でダイヤルをひねるのでは後者の方が勝つ確率が高いのはおわかりかと思います。
 しかし、最大のネックは、「他にもやることが多すぎて、競馬研究だけに時間を割けない現在のライフスタイル」 だと思います。競馬も株も同様に儲けられます(ある額以上になると株の方に利はあります)。 問題はどちらも勝つためには努力や勉強を要することです。お金を投資する前に、時間を投資しなければならないと言ってもいいでしょう。 このあたりが競馬が気軽な娯楽になりきれない原因だと思ってます。

 吉田は競馬が今後も発展と存続していくには若年層の新規ファンをもっとつかむ必要があると思っていますが(短期的に最も効果があるのは中高年ファンへのアピールです)、 単なる娯楽ではなく株式投資と同様に、はじめは勉強が必要である点を理解する必要があります。

 JRAが進める競馬教室も競馬場だけではなく、ウェブなど、新規の顧客が簡単にアクセスできるところで実施する必要があります。 その時、回収率はともかく、馬券が当たるということを実感させる必要があるでしょう。

 

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