Windows Vistaとソフトウェアビジネスモデル
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いよいよ今週Windows Vistaが発売されます。Windows Vistaは実に7年ぶりのメジャーアップデートです。 WindowsXPから数えると5年ぶりですが、XPはWindows2000のマイナーバージョンアップであり、 今回はカーネルレベルまで手を入れたアップグレードになっています。
■Windows Vistaによってもたらされるもの
Windows Vistaは、Aeroと呼ばれる新しいGUIを筆頭に多くの機能が盛り込まれて……いるはずでした。しかし、 実際には新しいファイルシステムであるWinFSの中止、新しいAPIセットであるWinFXのグレードダウン、 IndigoやAvalonはWindowsXPにも提供されるため、目新しいものはGUIのみという状況です。
もちろん、細部のチューニングは行われているため、 デットロックと呼ばれるレスポンスが急激に低下したり応答無しになるような局面は少なくなるようです。 去年にRC1をちょこっと触っただけでは、ここまでのストレステストは実施できていません。
大きな変化といえば、UAC(ユーザーアクセスコントロール)と呼ばれる実行権限の制限機能です。 RC1ではちょっとした操作のたびにUACによる問い合わせが入るため、かなりストレスがたまりましたが、 製品版ではうまく調整されていることを望みます。
OSの見た目と細かなチューニング以外にWindows Vistaを利用することで得られるものはなんでしょうか? この点についてMicrosoftは明確な答えを出していません。
■Windows XPによって変わったこと
さて、5年前の2002年にリリースされたXPの時はどうだったのでしょう? そもそもXPの名称は「user eXPerience」=「ユーザー経験」から来ています。キャッチフレーズも、 「これまで味わったことのない様な経験(Exprerience)」でした。Microsoftが用意した答えは、 ゴミ箱しか置かれていないデスクトップです。 これは結果的にマイコンピュータやマイドキュメントのショートカットをユーザーが貼り付けるだけに終っています。
少なくとも吉田はWindowsXPによって何かが変わったか、ユーザー経験を得られたかと言えばNoと応えるでしょう。 Windows2000を利用する場合と、WindowsXPを利用する場合では大きな差はありません。 強いて上げるならWindowsXPの方がデットスペースが大きいため、アプリケーションの見た目が微妙に違う点です。
■ユーザーはアプリケーションを使って目的を達したいだけ
OSは基本ソフトと日本語に訳されているように、パソコンを使う上で必要な基本的なソフトです。Operationg
Systemとは直訳すると「運用システム」です。つまり、パソコンを運用するためのソフトウェアということです。
OSの役割について改めて述べるつもりはありませんが、ユーザーの立場からするとOSをいじるのが目的ではなく、
その上で動作するアプリケーションソフトを使い、ドキュメント作成やネットなどのユーザー自身の要求を達成するためにパソコンを使います。
OSは黒子なのです。
さて、先日NHKの「クローズアップ現代」という番組でWindows Vistaの特集が組まれていました。番組では、 現行のパソコンではスペックが足らずインストールできないPCが多いとの指摘があり、その一例としてある消防署があげられていました。 この消防署では年間10台ずつWindowsXPのインストールされたノートPCを購入していました。しかし、 最近買ったパソコンでもVistaがインストールできない(HDDの容量不足)事が判明し、署員が困っているという話です。
これに対してMicrosoftの中の人は、「高性能なOSを動かすには、高性能のPCが必要だ。 パソコンを買い換えるいい機会だと捉えて欲しい」と発言していました。 高性能なOSはユーザーが求めているわけではないのですが。
MicrosoftのOSはWindows2000によって完成したと言われています。実際、 Windows2000は安定性も高く、ビジネス用途にも問題なく利用でき、多くの人の支持を集めています。 何よりもOSがあまり出しゃばらず、比較的スペックの低いパソコンでも問題なく利用できる点が素晴らしいのです。 黒子としてのOSを地でいってます。
■ソフトウェアビジネスモデル
Microsoftが新しいOSにあれこれ無駄な機能を追加している背景には、
ユーザーが使用中のOSから新しいOSに乗り換えてもらわなければ、
Microsoftの収益が落ちるというビジネスモデル上の問題があります。
サポートが停止するというのは方便に過ぎません(OSによってセキュリティが万全になると言うのは神話に過ぎません)。
もし、古いOSのサポートが年間契約によって維持される仕組みなら、
あまりMicrosoftも目くじらは立てないでしょう(それでも10年以上前の製品のパッチはさすがに作らないと思いますが)。
吉田も経験していますが、古いソフトの維持はかなり大変です。家電製品には、「製造終了後n年部品を保持する制度」 があり、これとソフトのメンテナンスを一緒くたに考えるコメンテータがTV番組によくいますが、 筋違いも良いところです。吉田もハードウェアベンダーの設計をしているので分かりますが、 修理用の部品を数年分確保するのと、ソフトウェアのメンテナンスを数年間行うのでは、意味が違います。
極端なたとえになりますが、エアコンや冷蔵庫が保守期間に入ったとき、 現在の環境基準に適合していなくてもメーカーは修理や改修の義務はありません。しかし、ソフトの場合は、 状況に応じてアップデートが求められます。つまり、開発工数が発生するわけです。
このメンテナンスにかかる工数をユーザーが負担するか、メーカーが負担するかの問題です。 フリーソフトやファイル交換ソフト(違法ダウンロード)により、ソフトウェアの価格は低く見られがちですが、 実際には皆さんが思っている以上に高価なものです。特に、カスタムメイドのソフトウェア(委託開発など)は、 パソコンどころか車が買えるぐらいの価格がかかることはざらです。大規模になれば、当然不動産以上の価格がかかります。
Microsoftを擁護する気はありませんが、ゴテゴテとしたOSを望まないなら、 ユーザーの側も意識を変えていく必要があると思っています。
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