名前を付けると言うこと

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 今書店のビジネス書のコーナーに行くと、やたらと「○○力」というタイトルの本を見かけます。例えば「発想力」、「交渉力」、 「数字力」など。ビジネス書界では自己啓発系のトレンドとして、何らかの能力を「○○力」と銘打って解説することのようです。

 さて、書籍のトレンドはさておき、「名前を付ける」ということについて考えてみたいと思います。名前とはいうまでもなく、人や物、 状態、メソッドなど固有の何かを表す名称です。名前をつけた瞬間に、あやふやなモノや状態は、具体的な定義、具体的なモノに変わります。

 先の書籍の例でも、「数字力」などという日本語は存在しませんが、ある特定の能力を表す言葉として、「数字力」 という名前をつけた瞬間に、数字を読み解く能力としての名詞として機能します。もちろん、新しい名前の説明は必要ですが(たいてい、 名前にはその定義づけがセットになっています)。

 新しい名前が広く浸透するかどうかは、ネーミングはもちろん、 定義が納得いくモノである必要があります(広く情報発信をするのは前提とします)。例えばあなたがこのブログを見ている「パソコン」 も元々は存在しない言葉です。1980年代にPersonal Computer(パーソナルコンピュータ)の事を「パソコン」 と略してマスメディアに流れたことに端を発しています(吉田の記憶が正しければ、テレビ東京のパソコンサンデーという番組がはじまりです)。
 ちなみにパソコンの前は、「マイコン」と呼ばれていました。これはMicro Computer(マイクロコンピュータ)の略ですが、 私のコンピュータ(マイコン)という意味でも使われていました。

 なお、厳密な用語の由来をひもとくのが目的ではないので、 その手の議論がしたい人はご自分のブログでやってください

 「名前をつける」という儀式を行うと、何が変わるのでしょうか? 例えばある技法や技術に名前をつけると、それまで「匠の技」や 「長年の経験と勘」と呼ばれてきた技術が、より普遍的な技術として定義され直されます。
 吉田のテリトリーであるプログラミングの分野でも、「デザインパターン」という手法(?)があります。これはプログラムの設計の際に、 問題解決のパターンを示したものです。ただ、よくよく見てみると、知らぬ間に自分が使っている問題解決方法だったりします。
 デザインパターンは、昔からプログラミングの分野で使われてきた問題解決の方法に名前をつけてカタログ化したもので、 これまで使っていた手法でも名前が付くことで、他人との意思疎通がスムーズになります。

 名前には

(1)あいまいなモノを明確に定義する
(2)コミュニケーションを円滑にする

という効力があります。その効果を意識して、広く使われそうなモノに名前をつけるときには慎重に行いたいものです。

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